もう一つの顔
軍事独裁国家ビルマ (上)

(4)


< 「微笑みの国」−観光客が全く知らないビルマの姿 >

5月末のラングーン。以前にも増して停電が多くなってきた。旅行者も
不便を強いられる。それ以上に、ビルマ人のの生活はますます苦しく
なっている。ホテルで観光客の一人から尋ねられた。

「公務員の月給が10ドルもないのだって? それでは苦しいはずなのに、
どうやってビルマの人は生きていくことができるの?」

それまでに半年以上、この国に滞在していた私は、こう答えた。

「この国は基本的に飢えない国なんです。天然資源が豊富で、主食のコメ
も不足することもない。たとえ軍政がむちゃくちゃな政策≠ナ国民を苦し
めたとしても、国民の側は生活者として生き抜く対策≠持ってます。
旅行会社は、『微笑みの国』の優しさばかりを強調します。でも、人は、
生活人としては、とてもしたたかなんですよ」

この状態は独立以降、40年以上続いている。人びとは、上からの不条理
な支配に慣らされ続けているんです。耐えて生活する知恵を持っているの
だ。

私が個人的に接した『ビルマ人』は例外なく軍政を嫌って変化を望んでいる
し、不満も蔓延している。それでも、現状を変えるための爆発的なエネルギー
はまだたまっていないように思える。しかし、何かのきっかけで大きく動き出
すような予感はこの数年間ずっと持ち続けている。

こういう説明を聞いても旅行者には実感がわかないようだ。私の話をうわの
空で聞きながら、実は旅行ガイドブックにかかりっきりになっている。自分の
旅行の行程の方が気になるようだ。

「東の方はゲリラがでて危ないって聞いたんですけど、本当ですか?」  
「タイ国境に接するカレン州内には、100万人近い 『国内避難民』 がいる
んだ。それに、世界で最も古い内戦は、ビルマ国内にあるんだ」
 昨年4
月、東の山で経験したことを話してみた。

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