金 明植 『 帝国の首枷 』
( 『辺境』1 影書房 1996年・10)

二 「日本の貧困」

        血の祭祀

(一)
戦争は 血の祭祀であり
血の祭祀に 参加した
将軍たちは
弱き者の 命を 奪い
血の代価として 勝利を 収めた
幼い命を 戦場に駆り立てて 殺しても
一度も 恥ずかしさを 示さなかった
勲章の前で 幸福であった
将軍たちの 名を 知っている
ああ、血の代価として 勝利を 収めた 将
 軍たちの 罪は
いたる都市に 溢れている

ぼくは 知っている
この都市が 叫ぶ 偽装された 平和と
自由の 妄言 そして
やがてすぐに 起こらざるを得ない 戦争の
 砲火を
知っている

(二)
血の祭祀に 参加した
富者たちは
傷ついた 命を 看護するでも なく
病に倒れ 飢えている 命を
工場の 鉄車輪の 下に 追いやり
労働の 代価と 剰余の分を かすめとって
 いるのではないか

ぼくは この都市の 権力の偶像の 前で 戦争の 勝利者たちと 会う
核兵器が 東京湾に 入ってきても
プルトニウム二九〇キロが 入ってきても
少しも恐れない 将軍たちと その市民に会
 う

この都市で 無抵抗の 市民たちに会う
悪徳の 支配の 鎖の前でも
つねに
温順な 市民たち
革命が 一度も なかった 市民たち
そして 帝国の 銃砲の 前で
永遠に 生け贄となってもいい 市民たちに
 会う

(三)
ぼくは 数知れぬほどの人に 会う
かれらは 化学兵器を 誇らしげに 造り
核ミサイルの 破壊力を 誇りながら 増産
 している
かれらは あらゆる 搾取と支配の 論理を
 組み立て
かれらは あらゆる 殺りくと惨殺の 論理
 を 組み立て
豊饒とした 食卓と寝床を もらっている
かれらは 演壇で 教壇で 幼い命を
血の祭祀の 深い穴へと 導いている
かられは 支配の鎖と 支配の法制度を 鋭
 く
組み立てている

ぼくは 知っている
かれらは 誰を 支配の鎖に
縛りつけているかを

(四)
血の祭祀に 参加した 主たちは
薄赤い 肌を さらけだし
戦争での 利益を 祈っており
戦争の 勝利を 宣伝しており
暗黒の 子と 交尾して
支配の 子孫を 孕んでいる
かれらは 弱き者の 労働を 吸い
将軍の 名を 高め
富者の 名を 叫び
情勢の 名を 賛美しているでは ないか
ぼくは 知っている
血を好む 将軍たちは
もちろん 白亞館でも 青瓦台でも 東京
 の 議事堂でも
利益をもとめて 戦争を 画策しているのを
かれらは 同盟のために 人民を 戦争に駆
 りたて
権勢のために 命の取引を しているこ
 とを

ぼくは 知っている
血の祭祀に 参加する
すべての 権力者たちは 民衆の敵であり
平和の 反逆者であることを
千葉の貧困は
おまえたち みなの 遺産であることを 知
 らねばならない。
 
千葉の貧困
飽食