地方旅行から首都ラングーン(ヤンゴン)に戻り、バスの中から黄金に輝くシュエダゴン・パゴダ(仏塔)を目にする。なぜかホッとする。そんなとき、自分も知らないうちにビルマ人に似てきているなと感じる。シュエダゴン・パゴダはビルマの人の心に根を下ろしている。
4月末、東南アジアをサイクロン・マラが猛威をふるった。ここラングーンでも、激しい雨が降った。例年なら5月の半ば頃に始まる雨季を告げる雨が、今年は一足早くやって来たようだった。肌を突き刺すような日差しとたたきつける雨が交差する日が続く。自然条件が厳しいビルマで、パゴダに金箔が張られている理由が判るような気がする。
その日、そんな雨が降りはじめる前、シュエダゴン・パゴダの東入り口でタクシーを降り、「西シュエゴンダイ通り」に通じる道を抜けた。自宅軟禁中のアウンサンスーチー氏が書記長を務めるNLD(=国民民主連盟)本部を撮影(前号参照)後、背後から誰かつけていないか気にしつつ、足早にその場を離れる。
誰かに見られて当局に通報されているかも知れない。人通りの少ない西シュエゴンダイ通りを急ぐ。もし後ろをつけられているようなことがあれば、すぐに大勢の人にまぎれることだ。そう思い、近くのシュエダゴン・パゴダの境内へと向かう。
|