昨年10月、世界的な原油高に伴って、ビルマでもガソリンや石油製品の値段が一気 に上がった。タンシュエ上級大将が実権を握るSPDCは、欧米諸国から経済制裁を
受けて外貨が不足し、国民生活は疲弊し切っている。これまで一ガロン160K(チ ャット)だったディーゼル石油は、一気に1500Kにまで高騰した。
マンダレーでは一日のうち、電気が通じるのは2〜3時間ほど。外国人の泊まるホ テルは、どうしてもディーゼル発電機を使わざるをえない。マネージャーの苦しさは
理解できる。さらに11月、経済的な苦境に追い打ちをかけるように、タンシュエ氏 の命令で、ラングーンからピンマナ市(マンダレーから南へ約350キロメートル)
へ首都機能が移転された。これで経済に加えて、政治的な混乱にも拍車がかかった。
さらに、民主化のシンボルであるアウンサンスーチー氏の自宅軟禁は今も続き、民 主国家への道筋は、全く見えてこない。ビルマ専門家の多くは、現在の軍事政権の基
盤の強固さを否定できないという。この国の状況を1993年から取材している私も、 この現実を認めざるを得ない。
だが、ビルマを訪れるたびに感じるのは、民主化活動が抑え込まれているといって も、その運動の灯は完全に消滅してしまったわけではない、という思いだ。取材活動
を続けるうちに、信頼できる友人もできた。彼らを通して、ビルマ国内で、軍政に反 対する人びとに紹介される機会も増えている。自らの命や安全を投げ打ってまで、自
由や民主主義を求める人はまだまだいる。
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