東南アジアの西はずれに位置するビルマ(ミャンマー)。 日本の約
1.8 倍の
国土を持ち、約 5200 万の人口を抱える。また、40以上の民族が交じり合う
多民族国家でもある。もっとも、日本で伝えられるビルマは、軍事政権 と民主
化指導者アウンサンスーチー氏の対立ばかり。
そんなビルマで、辺境に住む少数民族女性たちは、不条理とも思える厳しい
伝統文化を押しつけられてきた。パンデー(族)の人には、中国南部から伝
わった纏足。タイ国境のパダウン(族)の女性は、幼い頃から首に真鍮の輪
をつけられ、首長族と呼ばれるようになった(実際には肩が下がり、首が長く
なったように見えるだけ)。さらに隣国バングラディシュに接するチン州では、
顔に刺青を入れた女性を見かけることがある。
ビルマ国外では全く知られないこの刺青の風習は、インドやビルマの豪族
から娘をさらわれるのを嫌った両親が、娘を異様に見せるために無理矢理
始めた。今ではその風習は廃れ、40歳以上の女性にしか刺青は見られない
と聞いていた。だが。私がこっそり入ったチンの村では、20歳の女性の顔に
刺青があった。
ビルマは軍事政権のため、情報統制は厳しい。自国民はもとより、外国人の
自由な移動は極めて難しい。
ところが、西洋諸国から経済制裁を受けているビルマは、外貨獲得のために
観光産業にも力を入れ始めている。
それぞれの地域で残されている特殊な風習。 外部の者があれこれ言うこと
はできない。私が危惧するのは、自分の意志に反して入れられた刺青の顔を、
見せ物として利用する者がいることである。 実際、軍政権の特別許可を得た
観光業者が、エキゾチックな辺境ツアーと銘打ってチン州へ入っている。
国民の大多数は現在の軍事政権現を嫌っている。それなのに現地の人の
生活状況を考えず、自分の好奇心だけを満たす旅行があってもいいのだろ
うか。
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