金 明植 『 帝国の首枷 』
( 『辺境』1 影書房 1996年・10)
三 「民衆哀史」
女工
あの娘たちの 痛みは
あなたに 捧げる お祈りです
あの娘たちの 呻きは
あなたに 捧げる 賛美歌です
十度 辱められても
十度 馘きられても
生き残らなければ ならない あの娘たち
が 生き残らなければ ならない 理由は
あの娘たちだけの 生では ないからです
あの娘たちの 命では ないからです
昨日は 弟が 学費のために 自殺を 図り
昨日は 姉が 生活に疲れて 役人の家の井
戸に 身を投げて 死にました
あの娘たちの 苦しい 毎日が
享楽の 時では ないのです
長い 長い 苦役の 一日なのです
核兵器を 造り
戦争で 一儲けを 目論む 帝国人には
つまらない ことかも しれませんが
あの娘たちの 一日は 口に 糊する たた
かいであり
核兵器の 前でも
戦争の 砲弾の 中でも
怖れを 知らぬのは ひもじいから なので
す
あの娘たちの 叫びは
あなたに 捧げる 合唱です
あの娘たちの 辛い 労働は
あなたに 捧げる 祭りごとです
駅前の屑籠に閉ざされた
平和のメッセージ
従軍慰安婦